白馬岳へ
八方池まで往復をウォーミングアップとしていよいよ白馬岳に向かいます。
行程
第一日
猿倉荘から雪渓を登り、村営宿舎を経て白馬山荘までの距離6km、標高差約1,700m。白馬岳雪渓を登るルートは翌週には閉鎖されたため、このルートに挑める今シーズン最後のチャンスだったことになります。雪渓を歩いた距離はごくわずかでしたが、緊張して歩かなければならない箇所だということを実際に体感できたことは大きな収穫でした。この数年アイゼンを使っていないので、来シーズンは唐松岳でアイゼンをつけて歩くトレーニングをしてから訪れることにします。
第二日
白馬山荘を出発し白馬岳山頂を越え、小蓮華から白馬大池を経て栂池まで距離約10km、標高差約1,500mの行程*1。白馬大池から栂池までの下りは悪路。特に滑落するような箇所はないものの、白馬岳から白馬大池までのなだらかな稜線と比べると大きなギャップ。次回訪れる際の下山ルートは再考することにします。
小さくなった雪渓を登る(第一日)
林道から白馬尻
猿倉荘前のテラスから見る東の空には青空が広がっていますが早くも雲が湧き出しています。天気予報は午後から雨とのこと。雲と競争になるでしょう。
小屋前のテラスで出発の用意をしているとマイクロバスで数人の登山者が到着。昨夜は麓の宿に泊まったのでしょうか。なるほどそんな手もあったな。
工事用道路をショートカットする登山道を上り始めるとすぐに白馬鑓温泉への分岐。
そして木々の間から小蓮華が現れます。
どーん❗
明日歩く稜線も見えます。
ハイキングコースはここまで。この先は登山装備が必要。
なんという花なのか、ミヤマシシウドかな?
木道を渡るといよいよ登山道らしくなってきます。
小蓮華が綺麗で見入っていると、早くも雲が湧き出してきました。急ぎます。
白馬尻小屋の敷地に到着。白馬館のサイトには「今年は小屋の開設はない」と案内されています。下界であれば「営業していません」でしょうけれどこの小屋はプレハブで雪に埋もれる冬は解体されて土台の他は何もないので言い得てます。
白馬尻小屋の敷地で小蓮華を眺めながらしばし休憩。
ふり返るとガスが追いかけてくる。
雪渓へ
再び登り始めてまもなく雪渓のかけらが現れます。
岩と雪渓のかけらがゴロゴロ。
雪渓の端にたどり着く頃にはますます濃くなる雲、もつかな…。
そうは言いながらも足が止まります。岩の割れ目に咲いている花。葉が大根に似ていてからミヤマダイコンソウかな…。
八方池にいたベニヒカゲと思われる蝶と同じ種類かもしれません。
いよいよ雪渓に足を踏み入れます。ルートには赤いペンキのマーキングがありますが雪渓の状態は日々刻々と変わりますから一歩ずつ雪の状態を確かめながら歩きます。軽アイゼンは持ってきていますが、キックステップで通過することにして踏み入ります。
クレバスと大げさに呼んでいいほどの雪渓の割れ目、深さ3mくらい。
短いけれども緊張する区間を通り過ぎて雪渓の上部に到達。
登山道を横切る小さな沢に石を並べて水たまりを作り、ボトルを冷やしながら休憩。
それにしても標高約2,200メートルの地点にもかかわらず結構な水量の沢です。今年はあちこちの山小屋が水不足に陥っているそうですが、白馬岳ではその心配はなさそうです。
ミヤマトリカブトですね。
雪渓の上部にある巨大な岩。こんな岩が落ちてきたら大惨事。
葱平(ねぶかっぴら)*2を通り過ぎるとまもなく避難小屋。
花の咲く時期にはお花畑になると思われる場所。
またしてもミヤマトリカブト。
ミヤマウイキョウでしょう。
高山植物を撮っていると時間がどんどん過ぎていき、とうとうガスに追いつかれました。
村営頂上宿舎に到着
村営頂上宿舎が見えてきました。猿倉荘を出発してから約6時間。結構な行程でした。
村営頂上宿舎前のベンチから見る杓子岳。登山道が見えます。
お花畑の名残の中を白馬山荘へ
村営頂上宿舎から白馬山荘までのなだらかな登りの両脇はお花畑でしょう。盛りの時期は過ぎてしまっていますがそれでも多くの種類の花が出迎えてくれました。
カンチコウゾリナ(寒地髪剃菜)。街で見るとコウゾリナという雑草ですが、その高地種。
イワヒバリくん、採餌中。
おなじみ、トウヤクリンドウ。あちこちに咲いています。
高山植物の女王コマクサ。花の盛の時期に訪れることができたら楽しい場所です。
タッチの差で大雨を逃れる
お花畑の名残りの中で時間を過ごしているうちに雨がぽつりぽつりと来たので急いで白馬山荘に駆け込みます。やはり巨大な山小屋。
受付のある建屋前まで来たものの、まだ時間は早いし昼もまだなのでとりあえず昼飯と山頂レストランスカイプラザ白馬に入った直後に豪雨が来ました。
登ってきた登山道が見えなくなるほど視界が悪化。
窓際で窓を少し開けてみましたが吹き込みが強くとても開けていられません。
一息ついてから店内を見回すと、併設の売店にはいろいろな品物が…。その中でこのTシャツが目につきました。
かわいい雷鳥が描かれています。白と紺2枚を購入、限定販売だそうですからこれもラッキーだったか。
夕景
受付を済ませて少し濡れたウェアを乾燥室に入れ、荷物をほどいてからはルーティーンのだらだらです。それにしても広い小屋です*3。
夕食を済ます頃には雨も上がり視界が開けました。まもなく日没。
雪と岩の殿堂剱岳もここからの眺ると優しい姿です。一瞬、槍ヶ岳かと勘違いすするくらい。
富山湾が見えます
白馬岳山頂。
ふたたび剱岳。まもなく夕闇に包まれます。
月がでできました。明日も午後から雨の予報ですので早めに出発することにします。栂池まで持ちますように。雪渓を歩く*4貴重な経験ができた一日でした。
白馬岳山頂から栂池へ(第二日)
雲が多いものの白馬岳山頂付近には青空が広がっています。今日は白馬岳の山頂を越えて栂池に向かいます。今年の夏山はこれでしまいと思うと少し寂しく感じます。
小屋の外に出ると目の前に杓子岳。
そして劔。
雲の彼方に富士山。
剱岳。
富山湾へ延びる白馬岳の影。
朝日を浴びる劔。朝の景色は眺めていて飽きることはありませんがそろそろ朝食、そして出発の用意を始めなければなりません。また来年この景色を眺めに来ることにしましょう。
白馬岳
白馬山荘は館内がゆったりしていてとても山小屋とは思えない造りでした。
昨日は雨で外から眺めることができなかった山頂レストラン。見晴らしの良い場所に建てられています。
さて、出発。
白馬山荘からあっという間に山頂に到着。平日にもかかわらず登山者の多いこと。
劔。下ってゆくお二人はどちらに向かわれるのでしょう。
パノラマで1枚。
ガイドブックには東側は断崖なので注意するようにと紹介されていますが、まさにそのとおりの絶壁。高いところが苦手な人は少し下がってどうぞ。
それにしても、登山者の多いこと。人どおりが絶える瞬間を待ちましたがいつまでも佇んでいるわけにもいきませんのでこのへんで数ショット。
雲が忍び寄ってきています。今日も天気の変化との競争。
稜線を下る
名残惜しいですが白馬岳山頂を後にします。
山頂を振り返って1枚。
小蓮華の山頂を越える雲。
三国境に向かう登山者。
岩場の間に咲いている花と思えばこれは実が赤くなったイワベンケイ。こんな花が咲くそうです。
トウヤクリンドウ。
そうこうしているうちに三国境に到着。
日本海方向に折れると雪倉岳に進みます。ここにもお花畑があるそうでもう一泊を工程に追加しないとなりませんが行ってみたい山。
とうとう白馬岳山頂に雲が到達しました。
ほんとうに素晴らしい眺めでした。人気があることに納得。
白馬岳と杓子岳の間に劔。今年はこれで見納めです。
白馬尻小屋の広場を見おろすことができました。
小蓮華に到着。
小蓮華の山頂には鉄剣があります。こちらの記事によると昭和2年に白馬岳神社の氏子たちが石仏を祀る祠と併せて建てたのですが、2007年に山頂部分が崩落して標高が3m低い2,766mになってしまった際に無くなり今は頭部のない石仏のみが残っているそうです*5。ところで、小蓮華は「これんげ」と読みます。道中おおきな声で「しょうれんげ」と何回も言っており赤面(。-_-。)。
ここで中央の白馬鑓ヶ岳の左手に五竜が姿を現しました。この位置から見ても山体はずいぶん大きく、遠見尾根の長いこと。暑さに悶えながら登ったのは昨年でした。
6月下旬から7月上旬にかけて満開のお花畑であろう斜面を横目に見て白馬大池を目指して下り続けます。
振り返ると雄大な稜線。これほど後ろ髪を引かれ山もありません。
白馬大池が見えてきました。
八方池に比べるとやはり大きい。
湖畔はまるでテントの展示場。
いいなぁ。
栂池へ下る
白馬大池山荘の売店は炭酸系の飲料が売り切れており、栂池に下りた後の楽しみにします。白馬大池は薬師の湯経由で蓮華温泉に下る道と栂池自然園に下る道の分岐点です。今回は八方尾根山麓に戻りますから栂池自然園に向かう道に入ります。
穏やかに水を湛える湖畔をほぼ半周して岩がゴロゴロしている斜面の道に入ります。
白馬乗鞍岳の山頂のケルン。なだらかな山でとても火山だとは思えませんが山頂です。ここから栂池自然園までは濡れて滑りやすい大きな石が多いガレ場が続く道なので注意。行程の最後にきつい!。
途中の天狗原には木道がありここが終点かと勘違いをしますがまだしばらく悪路が続きます。
栂池自然園に到着
天狗原からまた悪路が長く続くことを覚悟していましたが意外に短く、まもなく栂池自然園に到着。
ロープウェイ乗り場前の広場にある看板。
栂池ロープウェイからゴンドラを乗り継ぎ栂池に下ります。そして、栂池からはアルピコ交通の路線バスで八方尾根山麓に戻ります。毎回、下山時はほとんど写真を撮っていません。カメラバッグの中のαが上りに比べて取り出しにくいからですが改善の余地ありです。
藤屋食堂
八方温泉でリセットしてから白馬駅前の藤屋食堂へ。八方から帰るときの定番です。
後は中央高速をひとっ走り*6。
後立山はやはりいい!
ログなど
第一日
標高2,000メートル付近の気温は30℃超え、まだ気温は高いものの前月の徳本峠に比べるとやや楽。
第二日
二日目の白馬大池付近での気温も30℃超え。
白馬岳から白馬大池までの稜線はどれほど眺めていても飽きることがなく、なるほど人気のコースだということが分かりました。来年花の季節にまた訪れることにします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。